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IFRS財団の最新活動情報_IFRS財団の最新の活動報告

公開日: 2026年5月1日
 筆者: 鵜飼千恵氏 一般社団法人IFRS Foundation アジア・オセアニア 代表理事

1.はじめに

 春の陽気が心地よい季節となりましたが、一方、地政学リスクの高まりは収まることがなく不透明な国際情勢が続いています。国内に目を向けると、2026年2月20日に企業内容等の開示に関する内閣府令の公布・施行が行われ、いよいよサステナビリティ開示基準の適用が開始される事となりました。サステナビリティ開示の開始は、企業価値の持続的な向上に資する重要な枠組みとして、その意義をより一層高めています。IFRS財団としても、基準設定主体としてこの取組を推進する活動を継続的に実施していきたいと考えています。

2.IFRS財団に関連するご報告

1)IFRS財団年次報告の公表(2026年3月31日)
 IFRS財団は、2025年の年次報告書・監査済財務諸表を公表しました。包括利益は1.3百万ポンドと黒字化し、準備金は49.2百万ポンドに増加しました。2024年に開始されたトランスフォーメーション・プログラムの結果として、コスト削減や継続的な組織改革、収益基盤強化策の効果が示されたこと、一部法域による拠出金の計上時期の変更やテクノロジー関連投資や採用関連の支出が想定を下回り、2026年に繰り延べられたことなどが含まれています。また、本年度の報告書では、財団内の資源配分の状況について、ステークホルダーに対する透明性を高めることを目的として、審議会別の費用内訳を新たに開示しており、国際会計基準審議会(IASB)は1.4百万ポンドの赤字、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は2.5百万ポンドの黒字を計上しました。財団が進めているトランスフォーメーション・プログラムの目的は、コスト管理を継続し、2026年以降の収益創出プログラムを拡大することにより、ステークホルダーのご支援のもと、両審議会の収支の均衡を実現することにあります。財団は、将来にわたってその役割を果たし続けられるよう、必要な改革を進めてまいります。本取り組みを支えてくださっている財団内外のすべての方々のご尽力に、感謝申し上げます。
IFRS – IFRS Foundation publishes 2025 Annual Report—Fit for the future

2)IFRS諮問評議会委員の選任(2026年1月14日)
 2026年1月14日に、IFRS財団のトラスティーは、IFRS諮問評議会(IFRS Advisory Council)のメンバーを発表し、新たに日本から経団連より黒田康平氏(三井住友銀行 アメリカ部門 財務・戦略企画部マネージング・ディレクター)が任命されました。IFRS諮問評議会は、トラスティー、国際会計基準審議会(IASB)および国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)に対して戦略的助言を提供する機関であり、今後とも黒田氏はじめ各メンバーからの専門的かつ建設的なご助言を賜りながら、その使命の遂行に取り組んでまいりたいと思います。
IFRS – IFRS Foundation Trustees announce the appointment and reappointment of IFRS Advisory Council members

3.IASB関連活動

1)リスク軽減会計のアウトリーチ
 IASBが2025年12月に公表した新しい会計モデルであるリスク軽減会計(Risk Mitigation Accounting)について、2026年3月に鈴木理事、ケレン理事、及び当該プロジェクトを担当しているテクニカルスタッフが来日して、関係者に向けて当該公開草案の教育アウトリーチセッションを実施しました。当該セッションにおいては、各団体より公開草案に対する多くのご質問を頂き、有意義な意見交換が行われました。当該公開草案のコメント募集期間は 2026年7月31日までとなります。加えて、金利改定リスクを純額ベースで管理している企業に対し、自社のリスク管理実務に基づいたフィールドワークへの参加も募集しており、その最終期限は2026年11月30日となります。是非、皆様のご意見をお寄せいただければ幸いです。

2)持分法プロジェクトのアウトリーチ
 IASBで現在再審議中の持分法会計に関するプロジェクトについて、2026年2月のIASB審議会において、日本の関係者との追加のアウトリーチで聞かれた意見等を反映した分析結果に関するペーパーの説明がなされました。また、2月のIASB審議会資料のフィードバックを受ける目的で、2026年3月に関係者とのアウトリーチを実施しました。日本の関係者のご協力に大変感謝しております。2026年5月IASB審議会では、2月審議会で複数の理事から出された多様な提案を踏まえて、更なるスタッフの分析と提案に基づく検討が行われる予定です。引き続き、日本の関係者の皆様の建設的なご意見、ご理解を賜れますと幸いです。

4.ISSB関連活動

1)企業と投資家のラウンドテーブルの開催
 2027年3月期より開始されるサステナビリティ開示にあたり、アジア・オセアニアオフィスでは各企業と投資家との直接の対話の機会を持つことでより有用なサステナビリティ開示が行われることを目的にラウンドテーブルを開催しています。具体的には、1月は医薬品業界、2月と3月は電気機器業界、4月は小売および食料品業界の企業及びそれに関連する投資家にお集まり頂き対話を行いました。対話の中では、1)マテリアリティの特定と有用な開示への転換、2)経営陣や取締役会の関与の重要性、3)迅速なデータ集計とそれに伴うシステム、プロセスの改善の必要性、4)保証への対応などが主なテーマとなり活発な議論が行われました。引き続き、この取組を通じて、IFRS S1およびS2の目的である企業と投資家の間のコミュニケーションを促進していきたいと思います。

2)日本アナリスト協会主催アジア・サステナビリティ・シンポジウム(2026年4月9日開催)
 2026年4月9日に公益社団法人日本証券アナリスト協会が、アジア・サステナビリティ・シンポジウムを開催しました。アジア太平洋地域においても、ISSB基準に基づくサステナビリティ開示制度の導入が進んでいる一方、企業による実務や投資家によるサステナビリティ情報の企業価値及び投資判断への活用は発展途上にあります。本シンポジウムはISSB基準の実装に向けた課題とその解決の方向性を示すことを目的に開催され、アジア・オセアニアオフィスにおいてもシンポジウム開催に協力させていただきました。シンポジウムは、日本アナリスト協会鳥海会長の開会の挨拶を皮切りに、ISSB議長エマニュエル・ファベール及び金融庁企画市場局長の井上氏の基調講演、その後、アジア太平洋地域をリードする投資家および企業による2つのパネルディスカッション、最後に小森ISSB理事による閉会挨拶が行われました。シンポジウムは英語で開催され、会場、オンライン参加あわせて800人超の参加を得て、盛況のうちに終了しました。シンポジウムの内容は今後のサステナビリティ開示にとって示唆に富むものであり、日本アナリスト協会のYouTubeサステナビリティ・ESGチャンネルで視聴が可能となる予定ですので、是非、ご覧いただければと思います。