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IFRS財団の最新活動情報_ IFRS財団評議員会議の開催

執筆日: 2023年3月30日
筆者: 高橋真人氏 IFRS財団アジア・オセアニアオフィス ディレクター

はじめに

 2023年3月、IFRS財団の評議員会議が6年ぶりに東京で開催され、エルッキ・リーカネン評議員会議長、各評議員及びIFRS財団の主要メンバーが来日した。リーカネン議長らは評議員会議の前後に開催された多くの関連イベント・会合にも出席し、岸田文雄内閣総理大臣、鈴木俊一財務大臣兼金融担当大臣、西村康稔経済産業大臣とも面談した。以下、その概要を報告する。なお、本稿はIFRS財団としての公式報告文書ではないこと、文中意見にわたる部分は筆者の個人的見解であることを予めお断りする。

1. 評議員会議

 3月1日から3日にかけて、コンラッド東京で評議員会が開催され、財団の戦略、運営、人事、財源等に関する議論が行われた。このうちデュープロセス監督委員会のセッションは公開で開催され、オンラインで配信された。

2. モニタリング・ボードとの合同会議

 3月3日、評議員会とIFRS財団モニタリング・ボードとの合同会議が開催された。前日に開催されたモニタリング・ボードの会合において、ジャン・ポール・セルベ議長の後任として、金融庁の長岡隆審議官がモニタリング・ボード議長に選出された。

3. 岸田首相との面談

 3月2日、リーカネン評議員会議長、バーコウIASB議長、ファベールISSB議長、ホワイト事務局長、鈴木IASB理事、小森ISSB理事が首相官邸を訪問し、岸田文雄首相と面談した。

4. 西村経済産業大臣との面談

 3月1日、ファベールISSB議長は、ロイドISSB副議長、小森ISSB理事とともに西村康稔経済産業大臣と面談した。面談では、全般的開示要求(S1)基準、気候関連開示(S2)基準の最終化、ファイナンスド・エミッション等について意見交換が行われた。

5. 金融庁長官との面談

 2月28日、バーコウIASB議長は、メゾンハッターIASB副議長、鈴木IASB理事、シャーIASBエグゼクティブ・テクニカル・ディレクターとともに中島長官以下金融庁幹部と面談し、「企業結合-開示、のれん及び減損」、「基本財務諸表」等に関して意見交換した。3月1日、ファベールISSB議長は、小森ISSB理事とともに中島長官以下金融庁幹部と面談し、S1、S2基準、人的資本、アジェンダ・コンサルテーション等に関して意見交換した。

6. FASF主催ステークホルダー・イベント

 3月2日、財務会計基準機構(FASF)主催、IFRS財団共催によるステークホルダー・イベントが開催され、IFRS財団関係者、国内の会計・サステナビリティ分野の関係者約130名が参加した。イベントに先立ち、鈴木大臣は、リーカネン議長、ファベール議長と個別に面談した。

7. FASFとの覚書(MoU)の締結

 3月1日、IFRS財団のリーカネン評議員会議長とFASFの林田理事長は、MoUに調印し、記者会見を開いた。本 MoU は、IFRS 財団及びIFRS財団アジア・オセアニアオフィスに対する FASF からの長期的な財政上のコミットメントを5 年間延長する内容となっている。

8. 企業会計基準委員会(ASBJ)との面談

 2月27日、バーコウIASB議長、メゾンハッターIASB副議長、鈴木IASB理事、シャーIASBエグゼクティブ・テクニカル・ディレクターは、ASBJを訪問し、川西安喜ASBJ委員長ほかと面談し、「企業結合-開示、のれん及び減損」、「基本財務諸表」、「国際的な税制改革」等について意見交換した。

9. サステナビリティ基準委員会(SSBJ)との面談

 3月1日、ファベールISSB議長、ロイドISSB副議長、小森ISSB理事、テヨン・パクISSB理事は、SSBJを訪問し、川西安喜SSBJ委員長ほかと面談し、ISSB、SSBJ双方の活動について意見交換した。

10. 経団連企業会計部会との面談

 2月27日、バーコウIASB議長、メゾンハッターIASB副議長、鈴木IASB理事、シャーIASBエグゼクティブ・テクニカル・ディレクターは、経団連を訪問し、企業会計部会(佐々木啓吾部会長)に出席した。バーコウ議長は、「企業結合-開示、のれん及び減損」、「基本財務諸表」、「国際的な税制改革」等について講演し、出席企業と意見交換した。

11. 日本公認会計士協会との面談

 2月27日、ホワイト事務局長は、日本公認会計士協会(JICPA)幹部、大手監査法人幹部と面談し、IFRS財団への協力、IFRS財団アジア・オセアニアオフィスの活動、サステナビリティ報告に関する保証等について意見交換した。2月28日、バーコウIASB議長、メゾンハッターIASB副議長、鈴木IASB理事、シャーIASBエグゼクティブ・テクニカル・ディレクターは、茂木哲也JICPA会長、佐藤久史JICPA専務理事ほかと面談し、IFRS財団アジア・オセアニアオフィスへの期待等について意見交換した。3月1日、ロイドISSB副議長、小森ISSB理事、パクISSB理事は、JICPA幹部と面談し、サステナビリティ開示に対する保証、S1、S2基準の最終化、業種別基準等について意見交換した。

12. 日本証券アナリスト協会との面談

 3月1日、バーコウIASB議長、メゾンハッターIASB副議長、鈴木IASB理事は、日本証券アナリスト協会を訪問し、神津多可思専務理事ほか同協会幹部と面談し、「企業結合-開示、のれん及び減損」、「基本財務諸表」、IASBとISSBの協働等について意見交換した。

13. デジタル報告に関する金融庁との面談

 2月28日、鈴木IASB理事、小森ISSB理事、シャーIASBエグゼクティブ・テクニカル・ディレクター、筏井大祐IFRS財団ITCG委員は、金融庁を訪問し、井上審議官ほか電子開示を所管する金融庁幹部と面談した。

14. IASBセミナー

 2月28日、JICPA主催、FASF共催によるIASBセミナーが大手町プレイス・カンファレンスセンターで開催され、オンラインを含めて国内外から約900名が参加した。IFRS財団からは、バーコウIASB議長、メゾンハッターIASB副議長、鈴木IASB理事が登壇し、講演した。3名は、のれんの会計処理、暗号資産をテーマとするパネルディスカッションにも参加し、意見交換を行った。

15. サステナビリティ開示に係る国際カンファレンス

 3月3日、金融庁主催、IFRS財団共催によるサステナビリティ開示に係る国際カンファレンスが大手町フィナンシャルシティ・カンファレンスセンターで開催された。岸田首相(ビデオ出演)による開会挨拶のあと、IFRS財団からは、リーカネン評議員会議長、ファベールISSB議長、田代評議員が登壇した。また、サステナビリティ開示のフレームワークの発展に向けて、及び、次の基準開発アジェンダへの期待をテーマとして、パネルディスカッションが行われた。

おわりに

 今回の来日で、バーコウIASB議長は、のれんの会計処理、基本財務諸表、国際的な税制改正等に関するIASBの対応をていねいに説明した。ファベールISSB議長は、S1、S2基準の最終化、人的資本を含む次の基準開発アジェンダについて関係団体と意見交換を重ねた。また、一連のイベント・会合では、東京のIFRS財団アジア・オセアニアオフィスに対する一層の期待が寄せられた。同オフィスは、昨年以来、ISSB所属のスタッフ、小森ISSB理事、パクISSB理事を迎え、業容を拡大しつつあるが、今後も引き続きIFRS財団、国内及びアジア・オセアニア地域全体のステークホルダーのために、より大きな役割を担っていきたい。

以 上