

実務補習所に入所される皆さんへ
日本公認会計士協会 常務理事(一体的能力開発[実務補習(会計教育研修機構含む)])
一般財団法人会計教育研修機構 実務補習責任者
菅谷 圭子
公認会計士試験への合格、実務補習所への入所、おめでとうございます。皆さんがこれまでに積み重ねてきた努力が実を結び、いよいよ会計職業専門家としての第一歩を踏み出されることとなります。心よりお祝い申し上げます。
実務補習所のミッション(存在意義)は、皆さんが「会計職業専門家としてふさわしい品位と幅広い識見を備え、専門的知識を実務上で応用できる能力を有する公認会計士」としてキャリアを歩み、グローバル時代の社会に貢献していくために、必要な基礎を身に付けるための補習教育を提供していくことです。
そして、修了考査終了前に身に付けるべき「基礎」は、以下のとおりです。
(1) 社会に貢献する会計職業専門家としての使命感、並びに、価値観、倫理及び姿勢
(2) 会計職業専門家に必要な専門的知識、実務能力、応用力とその学び方
(3) 会計・監査・税務・ICT/デジタルを一体不可分のものとして捉える視点
(4) 会計職業専門家に必要なコミュニケーション能力
(5) 公認会計士が活躍し社会に貢献する分野の理解
(6) 会計職業専門家に必要なネットワーク力(人的ネットワークを構築し活用する能力)
上記の「基礎」を身に付けるために、まずは現場での仕事にしっかり取り組んでください。その経験がこの実務補習をより実りあるものにします。自分に足りないと感じた知識や技能を意識しながら、この場を最大限に活用してください。この期間をさらに価値あるものにするため、私から三つのメッセージをお伝えします。
一つ目は「自ら考え、胸を張れる選択を」。実務で出会う監査や会計の課題は、教科書どおりにはいきません。「なぜこの処理が必要か」「どのような意味を持つか」を自分の言葉で考え、たとえ誰が見ていなくても主体的に倫理的に判断する、それが専門職としての第一歩です。
二つ目は「仲間と信頼を築く」こと。公認会計士の仕事は一人では完結しません。実務補習所で出会う同期は、一生を通じて支え合う仲間です。お互いを尊重し、正直に意見を交わし、疑問があれば率直に話し合う。そうした日々の積み重ねが、信頼という最大の資産を育んでいきます。
三つ目は「社会への広い視野」。公認会計士は監査の専門家であると同時に、社会の信頼を守る役割を担っています。「public interest」を、どうか常に心に留めてください。
皆さんは、どのような会計職業専門家を目指していますか?
実務補習所での経験や出会いが、今後の職業人生において大切な財産となります。皆さんが実務補習を有意義なものと捉え、それぞれの目標に向かって一歩一歩着実に成長されることを心より願っております。